Micro horizontal preparation
昨今における歯冠補綴治療は大きな変革の時期を迎えている。 その変革の渦中あるものは、近年のジルコニアや二ケイ酸リチウムと言えるであろう。金属を使用しないだけでなく、審美性と物性の優れたコーピングの登場は、演者の修復治療を大きく前進させた。 従来型のメタルセラミックは多くのエビデンスのある優れた材料である。しかしながら、同材料はメタルコーピングを使用するため、審美的な補綴物を作成しようとすると、その金属色をオペーク陶材で遮断する必要がある。さらにその上にデンティン、エナメルポーセレンを築成することにより、はじめて審美性に優れた歯冠補綴物が完成となる。
また、上記の4層構造を獲得するためには補綴物に一定の厚みが必要となる。それに伴い、ショルダー形成のための大幅な形成量が必要となり、生活歯であれば術中術後疼痛、さらには抜髄のリスクが大きくなる。 つまり、メタルセラミックを使用して歯冠補綴治療を行う際、審美性と歯質保存は表裏一体の関係であり、演者もその二つのバランスをとりながら行う臨床の難しさに頭を抱えながら補綴治療に取り組んできた。 しかしながら、ジルコニアや二ケイ酸リチウムに代表される、審美性の高い物性の優れたセラミックコーピングは、メタルコーピングを使用しないため、単一構造またはそれに近い形で歯冠修復ができる。 そのため、歯冠修復治療時の支台歯形成量は大幅に減少し、より多くの歯質を保存しつつ審美性を獲得することが可能となった。特に生活歯における支台歯形成量の減少は患者の苦痛の減少に他ならない。このような理由から、演者もまた歯冠修復材料をメタルセラミックスから、ジルコニアや二ケイ酸リチウムに変更した一人である。
また、マイクロスコープを用いた歯冠修復治療はその治療の詳細を実際に拡大化で確認しながら進めることができるため、より多くの歯質の保存につながる。ミニマルインターベンションで行う歯科治療は、昨今の歯科治療の最重要課題の一つとして認識されはじめている。根管治療のみならず、歯冠修復治療においても、視野を拡大することで、より確実な治療効果を得られると演者は考えている。
本講演では、臨床家である演者の支台歯形成が、使用するマテリアルの変化に伴いどのように変わってきたのか、また少ない支台歯形成で歯冠修復を行う際、演者が注意している事項とその基本的手技を各段階ごとに解説させていただく。
経歷
講師:内山 徹哉先生
2004年 東京歯科大学卒業
2010年 内山クリニック開業
2022年 医療法人社団マイクロデンタル設立 理事長就任